機械や設備のシール部品として「オイルシール」と「ダストシール」はよく使われますが、その違いをきちんと説明できますか?どちらも軸やシリンダーの隙間を塞ぐ部品ですが、目的・構造・材質・使用環境が異なります。本記事では、両者の違いを比較表を交えてわかりやすく解説します。
オイルシールとは?
オイルシールは、回転軸や往復動軸の周囲に取り付け、内部の油脂(オイル・グリス)が外部に漏れるのを防ぐためのシール部品です。リップシール、オイルシール、回転軸シールとも呼ばれ、JIS規格(JIS B 2402)で標準化されています。
オイルシールの構造
オイルシールは主に以下の部品で構成されています。
- 外周部(ケース): 金属または樹脂製のケースで、ハウジングに圧入して固定します。
- リップ部: ゴム製の薄い爪状の部位で、軸面に密着してシールします。
- スプリング(ガータースプリング): リップを軸面に押し付けて密着性を高めます。
オイルシールの主な材質
- NBR(ニトリルゴム): 最も一般的。鉱物油・グリス・水に耐性あり。耐熱温度は約-40〜120℃。
- FKM(フッ素ゴム): 耐熱・耐薬品性が高く、200℃以上の高温にも対応。コスト高。
- PTFE(テフロン): 化学的に非常に安定。低摩擦で高速回転用途に適する。
- ACM(アクリルゴム): 高温の鉱物油に強く、自動車エンジン周りに多用。
オイルシールの主な使用用途
- 自動車エンジンのクランクシャフト・カムシャフト
- ギヤボックス・トランスミッションの回転軸
- 油圧ポンプ・油圧モーターの回転部
- 産業用減速機の入出力軸
ダストシールとは?
ダストシールは、外部から粉塵・泥・水・異物が機械内部に侵入するのを防ぐためのシール部品です。ダストワイパー、スクレーパーとも呼ばれ、主にシリンダーロッドや直動軸の先端部に取り付けて使用します。
ダストシールの構造
ダストシールはシンプルな構造で、主に以下の要素で構成されています。
- リップ部: ロッドや軸面に接触し、異物の侵入を掻き取る形状(スクレーパー形状)のゴム部。
- 外周部(ケース): 金属または樹脂製で、ハウジングに固定します。
オイルシールと異なりスプリングを持たない構造が一般的で、比較的シンプルです。
ダストシールの主な材質
- NBR(ニトリルゴム): 標準的な使用環境に広く使用。コストパフォーマンスが良い。
- PU(ポリウレタン): 摩耗に強く、油圧シリンダーのロッドシール・ダストシールに多用。
- PTFE(テフロン): 低摩擦で薬品耐性が高く、精密機器や食品機械に使用。
ダストシールの主な使用用途
- 油圧シリンダー・空圧シリンダーのロッド先端部
- 建設機械(ショベル・ブルドーザー)のシリンダー
- 工作機械の送り軸・直動部
- 農業機械・屋外使用設備の防塵部
オイルシールとダストシールの違い 比較表
両者の主な違いを以下の比較表にまとめました。
| 項目 | オイルシール | ダストシール |
|---|---|---|
| 主な目的 | 内部オイル・グリスの漏れ防止 | 外部からの粉塵・異物・水の侵入防止 |
| シール方向 | 内側(内圧に対してシール) | 外側(外部異物を掻き取り) |
| スプリング | あり(ガータースプリング) | なし(一般的) |
| リップ形状 | 軸面に密着する鋭いリップ | スクレーパー形状(掻き取り型) |
| 主な使用場所 | 回転軸・ギヤボックス・ポンプ | シリンダーロッド・直動軸先端 |
| 動き | 主に回転運動 | 主に往復直線運動 |
| 代表材質 | NBR・FKM・ACM・PTFE | NBR・PU・PTFE |
| 耐圧性 | 比較的高い(低〜中圧対応) | 低い(圧力保持は不向き) |
| JIS規格 | JIS B 2402 | 規格品・メーカー品による |
オイルシールとダストシールは組み合わせて使う
実際の機械では、オイルシールとダストシールを組み合わせて使用するケースが多いです。例えば油圧シリンダーでは、ロッドの内側にロッドシール(油の漏れ防止)、外側の出口部にダストシール(外部異物の侵入防止)をそれぞれ配置します。
この組み合わせにより、内部の圧力保持と外部からの汚染防止を同時に実現できます。機械設計・保全の現場では、この違いを正しく理解した上でシールを選定することが重要です。
シールを選ぶ際の4つのポイント
1. 何をシールするか(目的)
オイルや流体を閉じ込める必要があるならオイルシール、外部の粉塵・水・異物を防ぐならダストシールを選びます。両方が必要な場合は両方を使用します。
2. 動きの種類(回転か直動か)
回転軸にはオイルシール、往復直線動作(シリンダーロッドなど)にはダストシールやロッドシールが適しています。動きの方向と速度を事前に把握しましょう。
3. 使用環境(温度・薬品・圧力)
高温環境ではFKM(フッ素ゴム)、化学薬品にさらされる場合はPTFE、一般的な鉱物油であればNBRが適しています。使用温度範囲・接触流体・圧力条件を確認してから材質を選定しましょう。
4. 取り付けスペースと軸径
シールはJIS規格や各メーカーの標準サイズがあります。軸径・ハウジング径・シール幅(高さ)を正確に測定し、適合する型番を選定しましょう。カタログや互換表を活用すると効率的です。
まとめ
オイルシールとダストシールは、見た目が似ていてもシールする方向・目的・使用場所が根本的に異なります。設計や保全の際に誤ったシールを選定すると、油漏れや異物混入による機械トラブルに直結します。
本記事の比較表を参考に、使用目的・動きの種類・使用環境・取り付け寸法を確認した上で適切なシールを選定してください。シールの早期摩耗・漏れが続く場合は、材質や型式の見直しも検討しましょう。



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