機械のシール部品として広く使われているOリング。ホームセンターや部品商社のカタログを見ると「P10」「G30」「V50」など記号と数字の組み合わせが並んでいますが、この違いを正しく理解していますか?本記事では、OリングのP系・G系・V系などの種類の違い、JIS規格に基づくサイズ表記の読み方、材質の選び方まで詳しく解説します。
Oリングとは?基本をおさらい
Oリングとは、断面が円形(O形)のゴム製シールリングです。溝に装着して圧縮させることで、流体(液体・気体)の漏れや外部からの異物侵入を防ぎます。構造がシンプルで安価なため、油圧・空圧・水・ガスなどあらゆる流体シールに使用される最もポピュラーなシール部品です。
OリングはJIS規格(JIS B 2401)で標準化されており、内径・太さ(線径)・用途によって系列が分類されています。
OリングのJIS規格系列の種類
JIS B 2401では、Oリングは使用目的・取り付け方法によって以下の系列に分類されています。
P系(運動用・固定用 小径)
P系は往復運動・回転運動・固定シールに幅広く使用される最も一般的な系列です。内径が比較的小さく、油圧シリンダーや空圧機器のピストンシール・ロッドシールに多用されます。
- 記号: P(例:P3、P10、P50)
- 内径範囲: 約 1.8mm ~ 660mm
- 線径: 内径に応じて1.9mm・2.4mm・3.5mm・5.7mmの4種類
- 主な用途: 油圧・空圧シリンダー、バルブ、ポンプ
「P10」の場合、内径が約10mmであることを示します。
G系(固定用 大径・配管用)
G系は主に固定シール(静的シール)に使用される系列で、配管フランジや蓋の面シールなど、動きのない部位に使われます。P系に比べて内径が大きく、配管継手や大型機器のフランジシールに多用されます。
- 記号: G(例:G25、G65、G145)
- 内径範囲: 約 24.4mm ~ 670mm
- 線径: 内径に応じて3.1mm・4.1mm・5.7mmの3種類
- 主な用途: 配管フランジ、蓋・カバーの面シール、大型バルブ
「G65」の場合、内径が約65mmであることを示します。G系は溝幅・溝深さもP系とは異なるため、溝設計時には注意が必要です。
V系(真空用)
V系は真空機器専用のOリング系列です。真空環境ではガスの透過・放出が問題となるため、材質・寸法精度・表面粗さの要求が厳しくなっています。半導体製造装置や真空ポンプなど、高度な真空環境で使用されます。
- 記号: V(例:V20、V80、V200)
- 内径範囲: 約 20mm ~ 1000mm
- 線径: 3.0mm・5.0mm・7.0mmの3種類
- 主な用途: 真空ポンプ、半導体製造装置、電子部品製造設備
その他の系列(SS系・S系)
JIS B 2401には上記のほかに、特殊用途向けの以下の系列も規定されています。
- SS系(小型固定用): 精密機器や小型バルブ向けの超小径Oリング
- S系(固定用): P系より太い線径で固定用途に特化した系列(一部メーカー独自規格)
P系・G系・V系 徹底比較表
各系列の主な違いをまとめた比較表です。
| 項目 | P系 | G系 | V系 |
|---|---|---|---|
| JIS規格 | JIS B 2401 P系 | JIS B 2401 G系 | JIS B 2401 V系 |
| 主な用途 | 運動用・固定用(汎用) | 固定用(配管・フランジ) | 真空機器専用 |
| 動きへの対応 | 往復・回転・固定 | 固定のみ | 固定(真空) |
| 内径範囲 | 約1.8〜660mm | 約24.4〜670mm | 約20〜1000mm |
| 線径の種類 | 1.9 / 2.4 / 3.5 / 5.7mm | 3.1 / 4.1 / 5.7mm | 3.0 / 5.0 / 7.0mm |
| 主な材質 | NBR・FKM・EPDM等 | NBR・FKM・EPDM等 | FKM・NBR・VMQ等 |
| コスト | 低〜中 | 低〜中 | 中〜高 |
| 代表的な使用箇所 | 油圧シリンダー・バルブ・ポンプ | 配管フランジ・蓋・カバー | 真空ポンプ・半導体装置 |
Oリングの材質と特徴
系列の選定と同様に、材質の選定もOリングの性能を左右する重要な要素です。代表的な材質と特徴を以下にまとめます。
| 材質 | 略号 | 耐熱温度 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| ニトリルゴム | NBR | -40〜120℃ | 最も汎用的。鉱物油・水・グリスに強い | 油圧・空圧・水回り全般 |
| フッ素ゴム | FKM(Viton) | -20〜200℃ | 耐熱・耐薬品性が高い。高コスト | 高温・薬品環境・燃料系 |
| エチレンプロピレンゴム | EPDM | -50〜150℃ | 水蒸気・ブレーキ液・アルコールに強い。鉱物油には不向き | 水道・スチーム・ブレーキ系 |
| シリコーンゴム | VMQ | -60〜200℃ | 耐寒・耐熱性が高い。耐油性は低い | 食品・医療・電気機器 |
| ネオプレンゴム | CR | -40〜120℃ | 耐オゾン・耐候性に優れる | 屋外設備・冷媒系 |
| ポリウレタン | PU | -30〜100℃ | 耐摩耗性が非常に高い | 油圧シリンダーのロッドシール |
Oリングの番号の読み方
Oリングの型番は「系列記号+数字」で表されます。数字は内径の呼び寸法(mm)に対応しており、以下のように読みます。
- P10:P系・内径 約10mm(正確には9.8mm)
- G30:G系・内径 約30mm(正確には29.7mm)
- V50:V系・内径 約50mm(正確には49.7mm)
実際の寸法はJIS規格表またはメーカーカタログで確認する必要があります。P系とG系では同じ数字でも寸法が異なるため、系列の混同に注意してください。
Oリングの選び方 4つのポイント
1. 用途(運動用か固定用か)で系列を選ぶ
往復・回転などの運動部にはP系、フランジや蓋などの静的シールにはG系が基本です。真空環境が関わる場合はV系を選定してください。用途を誤ると早期漏れや摩耗の原因になります。
2. 溝寸法から内径・線径を決める
Oリングの選定は溝の寸法から行います。溝の内径・幅・深さを測定し、JIS規格の溝寸法表と照合して適合するOリング番号を選定します。適切なつぶし代(圧縮率:一般的に10〜30%)を確保することが重要です。
3. 接触流体と使用温度で材質を選ぶ
使用する流体(油・水・薬品・ガスなど)と温度範囲に合わせた材質を選定します。一般的な鉱物油ならNBR、高温や薬品環境ではFKM(Viton)が適しています。材質の適合性はメーカーの耐液性表で確認しましょう。
4. 使用圧力と潤滑を確認する
高圧環境(10MPa以上)では、Oリングが溝の隙間から押し出される「押し出し現象」が起きやすくなります。このような場合はバックアップリングの併用や、硬度の高いOリング材質の選定を検討してください。また、運動用途では適切な潤滑剤の塗布がOリングの寿命延長につながります。
P系とG系の溝寸法の違いに注意
P系とG系は番号が近くても溝寸法(幅・深さ)が異なります。例えばP30とG30では内径や線径が違うため、互換性はありません。既存機器のOリングを交換する際は、必ず系列記号と番号の両方を確認し、同じ型番で交換することが基本です。
また、海外製品や汎用品ではAS568(インチ系)やメートル系など、JIS以外の規格品も流通しています。輸入機器の保全時は規格の違いに注意が必要です。
まとめ
OリングのP系・G系・V系の違いは、一言でまとめると以下の通りです。
- P系: 運動・固定どちらにも使える汎用系列。最もポピュラー。
- G系: 配管フランジや蓋などの固定シール専用。大径品が多い。
- V系: 真空機器専用。材質・精度の要求が高い。
Oリングは安価で入手しやすい部品ですが、系列・サイズ・材質の選定を誤ると漏れや機器トラブルに直結します。設計・保全の現場では本記事の比較表を参考に、JIS規格カタログやメーカーの技術資料も活用しながら適切なOリングを選定しましょう。



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